虫達の昔々の話

1.はじめに

  地球上に棲む昆虫類は80万種とも100万種とも言われており、あまりに膨大なために、まだ正確な数さえ数えられたことがありません。人間を含めた哺乳類がわずか約4千種ですから、地球は昆虫の惑星といっても過言ではありません。
 地球上に棲息する生き物に関して眼を開いてくれるいくつかの書物がありますが、「これから生物学をやってみたいなあ」と思っている若い諸君のためにその中身を少し紹介し、今の昆虫達が昔はどうだったかを少し覗いてみることにしましょう。


2.昆虫は何処から

 下の図の一番上の部分の虫を見てください。足もない、節だけの虫ですが、これが昆虫の祖先かも知れないというのです。こういう、非常識な(しかし素晴らしい)発想をした人が過去にいたというのが不思議なくらいですが、少し耳を傾けてみましょう。

昆虫の誕生より
「昆虫の誕生」:石川良輔:中公新書より

  「昆虫に近い動物で、それより基本的な体節を残している節足動物といえば、ムカデやヤスデである。この醜い虫たちが他のどの動物群よりも昆虫に近縁であることを知っている人は多分、あまり多くないだろう。
  一般に、昆虫と対比されることが最も多い節足動物はクモで、昆虫類との違いは脚の数、すなわち、昆虫の脚は6本でクモは8本である。と教えられていることが多い。一見して全く形が違い、数え切れないほど多数の脚がある多足類がはじめから比較の対象にならなかったのも無理はないが、系統的にみるとクモは、多足類と比べると、昆虫から遠くかけ離れた動物である。見かけが多足類より昆虫になんとなく似ているのは、生態的に近い環境で多様化した生活をしているものが多いために過ぎない。・・・・」。
  以上は、「昆虫の誕生」(副題:1千万種への進化と文化)石川良輔氏より転写させてもらったものです。私は、このようなことを今まで一度も考えたことがありませんでした。すばらしいですね。この本を読んで、やっと、生物学の入り口に立ったように思います。
  左の図をじっと眺めていると想像力を掻き立てられますね。皆さんも、少し絵を見て想像力を働かせて下さい。
  本文は固有の形態を完成させた現生昆虫の全ての目(もく)を、その系統関係から見渡しています。この本は、昆虫のことをもっと広く知りたい人、もっと深く楽しみたい人、勿論、生物学に興味を持っている人にもお勧めです。
 
  石川氏の本には参考文献として外国の本が沢山挙げられていましたが、かなり古い本で入手困難です。
  そこで、素人の強みを発揮して、勝手に解釈してみることにしましょう。
 現時点では、昆虫類は体節を持つ動物の中で最も機能的に分化したグループといえます。ミミズから見ればずいぶん変わったものです。単に体節が繋がっているだけでなく、幾つかをまとめて、進行方向の先端が頭部、次が胸部、そして腹部となっています(左図最下段)。

  このうち、頭部は5つの体節がひとまとまりになったもののようです(最下図の頭部の右側の線を上まで延ばすしていくと5節になります)。一つの体節が触角、上唇、大顎など口を中心にした器官に変化しています。これらの器官のもとになった体節には、本来ならば脚となるべき突起が生えるはずだったのでしょう。だから、触角などの器官は、もとの出自は脚ということでしょうか(上から2番目の図を参照)。
  なぜ、こんな構造になったのでしょうか。動物の移動の最大の目的は餌を求めることですから、最先端となる頭部は、餌を探したり、状況を判断したり、摂食するための仕組みが集中したのでしょう。したがって、頭部は感覚器(触角など)と口器(上唇、下唇、大顎など)を発達させて、脚をつける必要がなく、脚がない分、前後方向に長さを凝縮したと考えられます。

3対の翅を持つトンボのポンチ絵

  胸部はどうでしょう。胸部は3つの節からなっており、それぞれの体節に1対の発達した脚を、つまり胸部には6本の脚があります。また、胸部の2番目と3番目の節の背面に、それぞれ1対の翅を発達させたものを多く見かけます。私には胸部の1番目の節の背面に翅がないのが不思議でなりませんでした。ところが、宮崎駿氏の「風の谷のナウシカ」には3対の翅を持ったトンボが出てきましたし、猪又敏男氏の「地球絶滅昆虫記」(竹書房、1988年版)で渡辺可久氏による絵の中に、3対の翅を持つトンボ(左図)が描かれています。胸部の1番目の節には確かに小さいけれども翅があります。飛ぶのに邪魔になるということで退化したのでしょうか。これを見つけた時は、びっくりすると共に嬉しかったのを覚えています。

  さて、腹部は単純な構造をしており、10節か11節のものが主で、もちろん脚も翅もありません。しかし、その内部には消化管、生殖器、排泄器、循環器など内臓の中心になる部分がぎっしり詰まっています。

つまり、以上をまとめると、機能的には、

(1)頭部は感覚や摂食活動の中心
(2)胸部は運動の中心
(3)腹部は生理活動の中心

と、3部分の機能的な分化が見事に出来上がっています。
 このように、体節をまとめる方向に進んだのが昆虫だったというわけでしょうか?



3.生きている祖先

  さて、昆虫類の祖先は、南アメリカの熱帯ジャングルの下草の中や、湿気の多い落ち葉の中などに潜って棲息するペリパトゥスといわれています(日本ではカギムシと呼ばれている)。昆虫類の生きている祖先というわけです。この虫は、体の下側に節があり、爪さえそなえた数多くの足を持っています。丁度、背中がつるつるのムカデを想像してもらうとよく分かります。この動物は、環形動物(ミミズやゴカイ)と節足動物(ムカデ、クモ、エビ、カニ、昆虫など)を結びつける存在として学者の間で有力視されています(と書いている私は、NHKの「昆虫達の情報戦略」(生命40億年はるかな旅)で動く映像を見たくらいです)。

  人間がものを食べるときは、顎を上下させますが、昆虫は皆さんも知っての通り、口の両側にある大顎を左右に動かします。この両側にある顎は、一対の足が変化した器官なのです。たとえば、バッタの場合は一対の顎の後ろには、一対の小顎と一対の下唇と呼ばれる器官があります。これをうまく動かして餌を口に送り込みます。これらは、丁度節のある足そっくりです。

  昆虫はペリパトゥスのような動物から、より機能的に生活するために、体節と脚の数を退化させて出来上がったといわれています。ペリパトゥスの前方のいくつかの体節は昆虫の仲間では頭部になり、その後方の体節が胸部になったと考えられています。そして、退化した体節に付いていた脚の内の3対の脚が順に口の大顎、小顎、下唇と変化したようです。  
  翅のない昆虫のシミ  は、ムカデやヤスデのような腹部の足の名残があり、これらの生物から昆虫が進化してきた当時の特徴を良く残しています。

  ある説では、遠い昔つまり動物の化石が見つかっていない古生代以前の頃、原始的な体節をもつ動物がいて、これが軟体動物と環形動物と節足動物に分かれたといいます。

(1)軟体動物は体節をなくす方向に向かった。
(2)節足動物は体節に脚をつけた。
(3)環形動物はそのまま体節だけを発達させた。

  これらの動物は、どうやら共通の祖先がいるらしいということで、一まとめにされていますが、そうだとすれば脚のあるナメクジなどがどこかで発見されるかも知れませんね。
  カギムシの化石はカンブリア紀から見られるそうですが、この虫が昆虫の祖先といわれるのは、色々な状況証拠を並べて推測しているだけで、誰もあるものから別なものになる瞬間は見ていないのです。ダーウィンも「ある動物と別な動物が近縁同士であることを証明するような中間的動物の化石が見つからない」と悩んでいますね。
 カギムシのように、何億年も進化しないままの動物が、今でも立派に生きているという事実を前にすると、「じゃあ、変わり続ける方の意味って何だろう」とわからなくなってきますね。

  「生物学をやってみようかな」と思っている人は、このあたりから取り組んで見るのも面白いかもしれません。古生物学などは、何もかも分かっているようで、実は、仮説ばかりが乱立し、それが検証されないままで、ほとんど分かっていないというのが現状です。つまり、「何故」という問いかけに対して、はっきりと答えられないというのが実情だからです。


4.昆虫の翅は何故4枚か

青虫のポンチ絵  「昆虫は何故6本足か」と聞かれて、「6本足の虫を昆虫というのさ」では答えになりません。少しは理屈らしきものを述べなければなりません。それに加えて、足は6本なのに、何故翅は4枚なのかについても答えなければなりません。
  そういわれると、答えに窮しますが、こういうことです。蝶を例にとって説明しましょう。まず、蝶の幼虫を良く見ると、胸の部分は3つの節から出来ています。それらが1つに結びついて胸を形作っており、1つの節から2本の脚が出ています。したがって、脚の数は2本(1対)×3節=6本というわけです。
  それでは、同じ胸から生えている翅はなぜ6枚ではないのかという疑問がわいてきます。脚がそうなら、翅も同じ理屈で6本生えていなければなりませんね。
  上図に代表的な蝶の幼虫を示します。図では、一番左は頭部です。我々の目の前を飛んでいる蝶では、一番目の節に翅のある種類はありません。したがって、二番目と三番目の節から二枚ずつ翅があることになります。なぜそうなんでしょうか?
  化石の残っている3億年前の昆虫でゴキブリやトンボの仲間は、6枚翅のものがいたことが分かっています。ただ、一番目の翅は二番目、三番目に生えている翅に比べて比較にならないほど小さかったそうです。このことは、もともと6枚の翅を持っていた昆虫が存在していた証拠でもあるし、同時に一番目の翅が退化していったことを物語っているわけです。
  では、なぜ6枚の翅から4枚の翅に退化していったのでしょうか。現在見られる昆虫は、体を頭、胸、腹の三つに集約し、発達した3対の脚と1〜2対の翅および複眼を装備することによって、機敏に行動することが出来ます。
 いくつかの昆虫をよく観察してみましょう。

モンシロチョウ 胴体の上で両方の翅が触れ合うぐらい持ち上げ、次に2対の翅を同時に打ち下ろす。この動作を繰り返すことにより、浮く力が大きくなったり、小さくなったりするため体が上下に揺れる。この時の翅の動きは、前翅の前方から次第に後方へ移り、それに伴い翅の間に挟まれた空気が後方へ追いやられ、その反動で体は前に進む。舵取りは胴体で行う。 2対翅
カブトムシ
カミキリムシ
テントウムシ
前翅が硬くなって後翅をすっぽり覆っている。彼らは前翅を固定翼にして、後翅で羽ばたいて飛行する。何れも翅に比べて重いので、飛び方は優雅でなく、うまく飛べないものが多い。 2対翅
セミ 前翅と後翅を同時に動かして、速いスピードで飛ぶ。飛び方はぎこちなく、ぶつかったところに止まる傾向がある。 2対翅
ハエやカ 後翅が退化してしまって、前翅が2枚しかない。もっとも、後翅のあるべきところに棒状の平均棍とよばれるものがついている。これは体のバランスをとるのに使われているようです。 1対翅
トンボ 細長い2対の翅を別々に働かせる。つまり、前翅を上げるときには後翅を下げるというように動かして飛ぶ。このような原始的な飛行方法にもかかわらず、トンボは空の軽業師といわれるくらい器用に飛び回ることができる。 2対翅
ミツバチ オールで水をかくように翅を動かして空を飛び回る。「物理学では飛べないことになっている」といった学者がいましたが、現実に飛んでいるわけですから、その仮説そのものが間違っているわけです。 2対翅
ノミ
アリ
シミ
シミは翅を持ったことのない昆虫。アリやノミは翅を無くした高等な昆虫である。  なし

  ご覧の通り、3対の翅を持つ昆虫がいないのは皆さんもご存じの通りですね。昆虫は翅を推進力にしますから、それをどう動かすかが問題になります。もし、6枚(3対)が別々に動いたら渦が出来てうまく飛べないのではないかという意見もありますが、ムカデが転ばずにうまく歩くことを考えればそれは理由にはならないような気もします。勿論、淘汰の結果6枚バネの昆虫がいなくなり、4枚あるいは2枚翅の昆虫に落ち着いたということは、やはり流体力学や航空力学とは矛盾する構造だったということになるのでしょうか。

  「6枚翅の昆虫がいたって良いじゃないか」と思ったのは、前記したように、かって映画「風の谷のナウシカ」の中で、6枚翅のトンボがスイスイ飛んでいるのを見て以来、このことが頭から離れません。いれば「それこそ、自然が作り出した芸術作品だ」といわれるでしょう。実際にはいないわけですから、このままでは、科学は始まりません。もっと、すっきりした解答があるようにも思えるのですが。

  よく、昆虫の雑誌などに出てくるユカタンビワハゴロモのあのスカスカの頭の部分を見ていると、ワニに似てはいますが、人間がそう思うだけで擬態でもなんでもないように思われます。これなども、トンボの翅同様、「自然にある形は、全て機能的である必要などあるのだろうか?」と疑問を抱いてしまいます。


5.蝶は何時頃地球上に現れたか

  蝶の起源の話をする前に、高校の生物の復習をしましょう。今から46億年前、太陽系の一惑星として地球が誕生したとき、地球は高温のために動物も植物も存在せず、今さかんにいわれている生態系などは存在しませんでした。
  生物が進化してきた様子は、化石や現在生きている生物から得られる情報で推定するしかありませんが、今まで得られた知見をまとめて、駆け足でみてみると次のようになります。

○宇宙が出来たのが150億年前
○地球が誕生したのが46億年前
○古生代(石炭紀)に昆虫が現れるのが3億年前
○古生代、中生代を経て巨大隕石で恐竜が滅びたのが6500万年前
○新生代(第三紀・漸新世)に蝶の化石が発見されたのが3000万年前
○人類最古の化石は440万年前
○そして今の人類になったのが30万年前

ということになります。図表でもう少し詳しくまとめると以下のようになります。

新生代 第四紀 - 哺乳類 被子植物
魚類・鳥類
マンモス
第三紀末期に人類の祖先
が出現
漸新世(蝶の化石)3000万年ほど前
(地質年代)
6500万年前
(巨大隕石の衝突)
第三紀 鮮新世
中新世
漸新世
始新世
暁新世
中生代 白亜紀


ジュラ紀


三畳紀
爬虫類 哺乳類は白亜紀から出現。
裸子植物
アンモナイト
恐竜
 白亜はドーバー海峡からイギリスを見た際、白亜の壁がそそり立っているがその土壌から化石が出土した。およそ1.4億年から6400万年ほど前である。
 ジュラ紀のジュラとは、フランス東部のジュラ山脈からきている。2億年〜1.4億年ほど前である。
3億年前 古生代
二畳紀


石炭紀
木生シダ 獣型爬虫類
ディメトロドン

昆虫
大型のトンボ
デボン紀 陸生動物 ユーステノプテロン
シルル紀 陸生植物
オルドビス紀 バージェス動物群 奇想天外な生物達が多く、人間の想像力をはるかに超えるものが多く出てきた。この時代の生物に関する読みものにはわくわくさせられます。
三葉虫(虫ではなく、節足動物の仲間。3葉とは体が縦方向に三つに分かれているように見えるから)
アノマノカリス
オパビニア
 カンブリアとはイギリス・イングランド地方にある地名で、ここで5億年以上昔の化石が見つかった。
5.8億年前 カンブリア紀
先カンブリア時代 ベンド紀 エディアカラ動物群
ストロマトライト(化石)
38億年前:最初の生命誕生
46億年

  昆虫が出現するのは石炭紀(約3億年くらい前)になってからです。この時期に現れるのが、トンボ、カゲロウ、ゴキブリなどで、化石も沢山見つかっています。蝶はこれらよりずっと遅れて、中世代の白亜紀以後、花の咲く植物(被子植物)の出現と共に現れます。蝶の化石、というよりも鱗翅目の化石は非常に少なく、最も古いものは、およそ6千万年ほど前の新生代のコバネガやミノガなどの小蛾類といわれています。
 蝶の化石は特に少なくて、現在までに50〜60個体が発見されているに過ぎず、そのうち最も古いものは約3000万年ほど前の地質時代の漸新世の地層から発見されたもので、セセリセセリチョウ、アゲハアゲハ、シロチョウシロチョウ、シジミシジミ、テングテング、タテハタテハ、ジャノメジャノメ、と現在見られる科はすべて揃っているようです。したがって、その頃見られた蝶は、ほぼ現在の姿に近かったのではないでしょうか。

  蝶の先祖が何であったかははっきりしておらず、現在のところ、大型の小蛾類のボクトウガが先祖ではないかと考えられています。これは仮説ですから、新しい事実が発見されて、「間違っていました」ということだってありうるわけです。


6.トンボの祖先は何か

トンボの祖先のメガニューラのポンチ絵

 メガニューラ・モニィ(Meganeura monyi:メガネウラとローマ字読みをする人もいます)は開帳70cm(普通の机の高さ)、体長40cmにもなる史上最大の昆虫です。現代のトンボの直接の祖先ではありませんが、石炭紀を中心に栄え、その後絶滅しています。
 福岡県北九州市の市立自然博物館に実物大復元模型がおいてあります。がっしりした体つきで、頑丈な足を持つ昆虫で、複眼は今のトンボよりずっと小さく、尾端には飛行機の尾翼のような付属物があります。(化石昆虫より
 
 トンボの祖先
ともいわれているメガニューラ(左図)の概要を示しておきましょう。 このメガニューラ(Meganeura)、脱皮するときはどうしたのでしょうか。クチクラがまだ固まらないうちに、空気中でヤゴから脱皮するのはとても危険です。空気中で、翅が固まるまでヤゴにぶら下がる力はあるのでしょうか。自重で形が崩れてしまわないでしょうか。そうならないためには、鯨のように浮力を利用するしかありません。ということは、水中で脱皮したのでしょうか。今の大きさのオニヤンマでも脱皮に失敗することがあるくらいですから、メガニューラの脱皮は大きな困難を伴ったはずです。本気で考えたら面白そうですね。

7.おわりに

  皆さんは「人は初めから今のような形をしていたんだろうか」とか「人間も昆虫もほぼ左右対称なのは何故だろう」など疑問に思ったことはありませんか。
  上に記したような昆虫の変遷が本当だとしたらすごいですね。「本当だとしたら」というのは、これらは全て仮説で成り立っているからです。昆虫の世界を「その前は」「さらにその前は」と突き詰めていくと、必ず大きな壁にぶつかります。そこを打ち破れないのは、ダーウィンもいうように「ある動物と別な動物が近縁同士であることを証明するような中間的動物の化石が見つからない」という点にあります。

  科学の方法というのは、ある問題を解くために、まずある仮設を提案し、その仮説と因果律つまり自然法則とを用いてある予測を行い、その予測を観察あるいは実験によって確かめていくというところにあります。

@問題の提出
  ある問題を解くためには、その問題の「はっきりとした提出」と「的確な表現」がなければなりません。しかも、「よく提出された問題は、半ば解決している」とも言われます。だいたい、問題がよく解けない場合、その問題の提出があいまいで不十分な場合が多いことに気が付きます。

A仮説と予測
  仮説はまだその正しさが証明されていない理論であり、これからその正しさを証明すべき理論です。したがって、同じ問題の解決に異なった多くの仮説が提案されるのが普通です。つまり、この部分は、最も人間的な部分でもあるわけです。今までの人間が持っている常識の範囲内の思考の他に、常識外れのものもあるはずです。このような常識外れの仮説の正しさが証明されると科学が大きな進歩と飛躍を経験する場合があります。この領域は、これからの若い諸君に是非挑戦して欲しい分野です。

B実験と観察
 次に、この仮説の正しさを、観察や実験で確かめなければなりません。
そのうちの観察というのは、自然界に起こっていることに手を加えないで、ありのままに見ることです。もう一つの実験というのは、自然界に起こることに手を加えて、人工的な条件のもとでどのようなことが起こるかを見るわけです。

  一般的には、自然界では、多くの原因が重なり合ってある結果が起こっている場合が多く、色々な結果が足し合わさったものが私たちが観察する結果ですね。この間の事情は「モンシロチョウの雄はどのようにして雌を見分けるか」を是非ご覧下さい。

  科学の対象が、生物でない場合は、人工的な条件を作ることは比較的容易ですが、相手が生物の場合はこのような人工的な条件を作ることは難しいことは充分想像できますね。一般的にいって、実験的な方法が使われれば使われるほど、科学の進歩は著しいわけです。したがって、物理学や化学に比べて生物学の進歩が遅れている理由の一つはここにあると考えられます。
 私が中学から高校にかけて生物を習った経験では、つまり学校のカリキュラムでは、生物の知識は断片的で、詳しく学ぶ手掛かりは与えられませんでした。最近の子供達が全く自然への興味や理科的好奇心を持っていないかというと、そうでもなく、彼らに生物や科学を体系的に学ぶシステムを与えてやりさえすれば、理科離れや科学離れを防ぐ手段はまだあるように思われます。
 新聞などには、時折面白い話題が載ったりしますが、テーマの取り上げ方が1点集中型で、わからない人には全くわからない場合も多いようです。少しでも興味を持って、継続して読んでいれば、やがて知識の回路が出来てきます。すなわち、問題意識さえもっていれば、知識は互いにリンクしていきます。全体が見えてくると、面白味も倍増します。「頭のやわらかい若い時期にこそ、好奇心をどんどん広げ育てていって欲しいなあ」と思っています。  

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