虫は青いネオンに、人は赤提灯に


飛んで火にいる夏の虫
ピーター・ファーブ「昆虫」より

   「飛んで火にいる、夏の虫」と昔から言われるように、昆虫は夜になると灯に集まる習性があります。 私の子供の頃は「誘蛾灯」といって、田んぼには必ずといっていいくらいこれが備え付けられていました。
 この装置は、蛾などの稲の害虫を誘い出して灯の下に水を入れた受け皿を設け、落ちた虫を溺死させるという手の込んだものでしたが、最近のものは感電死させるという手っ取り早い装置に変わっているようです。子供の頃、夜行列車に乗って夜の田んぼ一面にある誘蛾灯を見て、眠いのも忘れて見とれていたことを思い出しますが、それは壮観でしたよ。
 光を虫除けに利用することについては,古くは「松明」(たいまつ)などの使用が知られており,近年には電灯などの灯火による誘殺が考えられました。「誘蛾灯」は電気の普及に伴って,有効な殺虫剤が少なかった戦後の食料増産時代(私の子供の頃)には欠かせない虫退治の技術であったわけです。
 現在でも、旅館など大切な客の集まるところでは、この装置を設置しているところがあり、青白い光に吸い寄せられてやってきた虫たちが、電気椅子よろしく、「バリバリッ」という音とともに、命を失う姿をよく目にします。本能で光に吸い寄せられるとはいえ、なんとも哀れです。

 昆虫たちにとっては、人間が現れる前までは月の光が唯一の光源で、しかも彼らにとっては月が無限遠にあるために平行線として捕らえられ、それを両目で見て夜間行動とっていました。
  ところが人間の出現とともに、いろいろの場所に光源(点光源)が現れ、ちょっと方向が変わると両眼に入る光の量が変わるため、両目に光が均等に入るようにそれを補正しようと方向を変え、ついには火(や光源)の中に飛び込んでしまうという、人間が出現しなければもともとなかった行動をとるようになりました。夜になると、街灯の周りを蛾たちがぐるぐる回り、電柱にぶつかっては、この行動を繰り返しているのをよく見ることができます。

 夜、人間の行動を空から見てみると、赤提灯を中心に人間が吸い寄せられている光景は、蛾たちが街頭の灯りに集まってくる行動によく似ていると思いませんか。

 また、多くの昆虫の視覚は、人間のそれとは異なり、短い波長側にずれています。すなわち、昆虫は人間が見える青から、見えない紫外線まで感知することができます。ところが一方で、赤系統の色を感知することができません。
 私たちが見ている虹の七色の両端は紫と赤ですが、これは人間が見える範囲で勝手に決めた色というわけです。したがって、虫から見れば、人間とは違って、赤は見えず、紫外線まで見えているはずです。

 昆虫が紫外線を感知するのに対して、波長の長い赤外線に対しても、感知できる生物がいます。もちろん人間も皮膚で漠然と熱として赤外線を感じますが、ある種の蛇は、頭部に特別の赤外線感知の目があり、動物の体温をキャッチし、これらを捕獲する能力があるものもいます。