不思議な6角形蜂の巣


蜜蜂の巣

  虫達を追っかけていると、自然の不思議さに良く出会います。蜂の巣もその一つですが、自然が作る造形美というのは目を見張るものがあります。
  左の写真は蜜蜂の巣の様子ですが、この巣の断面が何故六角形なのか考えたことがありますか。何を手掛かりにすれば良いのでしょうか。少し考えてみましょう。

 そこで先ず、周辺の長さが一定の多角形を考えます。糸の長さを1とし、
@正三角形を作れば、1辺が1/3なので、面積は になります。


Aまた、正方形を作れば、1辺が1/4なので、面積は(1/4)=0.06250になります。
B円を作ればもちろん0.07958となります。したがって、周辺の長さが1の正多角形の面積は下の表や図のようになります。

周の長さが一定の多角形の面積
面積
正三角形 0.04811
正方形 0.06250
・・・ ・・・
0.07958

 これより、周囲の長さが一定の場合は、円形に近いほど面積は大きくなることがわかります。蜂の幼虫は断面積が円形ですから、これは好都合ですね。でも、蜂の巣は円形ではありません。何故でしょう?
 以前は、蜂の巣が出来る間に、やわらかいロウ製の円筒形の部屋が乾燥して6角形になると信じられていましたが、蜂が巣を作るあらゆる段階を研究した結果、彼らは、初めから終わりまで6角形の部屋を作ることが判りました。
  したがって、「材料が同じ量なら、より円に近いほうが効率よく巣を作れる」というわけです。しかしながら円を並べると、互いに隙間ができてしまい、かえって効率がわるくなります。ではどうすれば良いのでしょうか。

  そこで、「同じ大きさの正多角形で面を敷き詰めるにはどうすればよいか」を考えてみましょう。ところが、平面を覆うことができる正多角形は、「正三角形」と「正方形」と「正六角形」の3つしかありません。これだと考えるのも難しくありませんね。 この中でもっとも円に近いのは正六角形です。実は、紙で円筒を沢山作って、周辺から均等に圧縮すると円筒は自然に正六角形になります。これは都合がいいですね。
  つまり、隙間を作らず、かつもっとも効率のよい構造は「ハニカム(honeycomb:ハチの巣)」の構造(6角形)だというわけです。その上、個々のブロックが円に近い形状なので、周辺が互いに補強し合って、外からの圧力に対しては負荷を分散させることができて、剛性が高い構造にすることが出来るわけです。

 理屈は分かりましたが、作るのは簡単なのでしょうか。
 正方形では壁を一定の長さだけ作ったら、90度ずつ三方向に延ばしていけば良いわけですが、六角形だったらどうなるでしょうか。120度ずつでちょうどニ方向に壁を延ばしていけばいいわけですね。これだと作業工程が1方向少ないだけ楽になります。

  車などに軽量化のためにハニカム構造が採用されていますが、これは軽量化してエンジンの負担を下げて、しかも剛性を落とさないで衝突時の破壊や衝撃を和らげるための工夫で、蜂の巣からヒントを得たものです。
  数学など知らないはずの蜂たちが「周が等しく、等辺等角の図形の中では、角数が多いほど面積が大きい」ということを本能的に知っているとしか考えられません。蜜蜂の天才数学者ぶりには驚きますね。
 

  藪の中のホソバセセリを追いかけているうちに、見かけない蜂の巣を見つけました。どうやら、アシナガバチの仲間のホソアシナガバチの巣のようです。雌の成虫は、交尾後越冬するといわれ、薄暗い場所の葉の裏などに巣を作ります。下の写真も、ストロボをたこうかなと思ったほど暗いところでしたが、葉を少し捩じって撮影しました。警戒はしていましたが、攻撃性は余りないようです。

ホソアシナガバチの巣(池河内湿原:2004.7.15

 よく見かけるセグロアシナガバチやキアシナガバチとは異なり、何となく弱々しく感じられるのは、アシナガバチと名前は付いていますが、分類上は異なるのかも知れませんね。
 また、巣にも特徴があります。セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、ヤマトアシナガバチ、フタモンアシナガバチなどの巣は、巣全体の重心で支えられていますが、ホソアシナガバチの巣は、片持ち梁のようになっていて、支点は曲げる力に耐えられるように作られているところです。
 写真では上に支点があり、巣の方向は右向きです。なんとも不思議な構造をした巣ですね。